学部2年生へ
機械工学科では,2年生の終了時に,研究室を決めるゼミ分けがあります.しかし,学部2年末の段階では,機械工学の基礎科目(材料力学,機械力学,流体力学および熱力学)が終わったばかりで,まだ,どのような分野を専門としていくか悩むことも多いでしょう.ここでは,本研究室の「研究分野ゼミ(3年秋学期必修科目)」と「卒業研究IおよびII(4年必修科目)」の進め方を示します.研究室選択の参考にしてください.本研究室の卒業研究で最も重視することは,「1年間の卒業研究でどれだけ学生が成長できるか?」です.社会で機械技術者と認められるためには,かなりの知識が必要です.1年間で全ての知識を網羅することは不可能なので,「固体力学」という基礎的な分野で,仕事の進め方(基礎理論の勉強方法,実験機器の取扱い,計算や解析の基本,計画の立て方,報告の仕方など)を身に着けることに主眼を置きます.
研究分野ゼミ
- ゼミは週に1コマ,原則として,通常の授業と同じように毎週実施します.
- 卒研を進めるために必要な知識を身に付けることを目的として,内容は,2年次の材料力学の復習も兼ねて,輪講形式で実施します.
- 「輪講」とは,与えられたテキストや資料について,学生自身が解説者となり,内容を説明し,相互に議論する場です.
- これまでに用いたテキストを以下に記します.
- 「はじめての塑性力学(日本塑性加工学会編)」
- 「JSMEテキストシリーズ 加工学Ⅱ―塑性加工ー(日本機械学会編)」(「塑性力学」の章)
- 「JSMEテキストシリーズ 材料力学(日本機械学会編)」(「はりの曲げ」の章)
- 「Schaum's outlines Strength of Materials (William A.Nash et al.)」(Chapter1,2)
- 分かっているような気になっていても,いざ説明しようとすると,自分の理解の浅さに気付きます.こうゆう体験をしながら自分の力量を知り,そこから努力することが,成長につながります.
- 後半では,プレゼン練習や卒研テーマ決めを行っていきます.
- テーマが決まった後には,順次,先輩から実験機器の操作方法や研究の進め方を引き継いでいきます.
- 大学院への進学を考えている学生は,早目に教員に相談してください.学部4年の1年と大学院の2年と併せて3年という期間は,若い諸君にとっては長いと感じるかも知れませんが,研究期間として考えると決して長くはありません.1年間の卒研と2年間の修士課程(博士前期課程)で十分実力を伸ばせるテーマを検討しましょう.
- 以下に固体力学研究室に関連する学部の講義を記します.
- 1年生科目:物理Ⅰ・Ⅱ,数学,応用解析,機械材料1・2
- 2年生科目:材料力学1・2,機械力学1,熱と流体の力学
- 3年生科目:固体力学,塑性加工
卒業研究
- 卒研は,1年間かけて実施する「社会で役に立つ技術者」となるための学生生活最後の取組です.
- 卒研には「研究」と名がついていますが,1年間では充分な研究はできません.これまで多くの技術者や研究者が検討し尽くしてきた内容の上に,たった1枚の研究成果を乗せるだけでも相当な見識と努力が必要です.
- この意味では,「卒研」は研究という形式を使った「実習を通した教育」です.研究成果を出すことが合格の条件ではありません.実験事実に真摯に向かい合い,十分に結果を検討することができれば卒研としては合格です.
- 卒研はどのようなテーマであっても,以下の3段階を踏んでいきます.
- 第一段階:自分のテーマに対して理解を深める.
- 第二段階:自分の力で自分のテーマを進められるようになる.
- 第三段階:自分で結果を解釈し,それを言葉や図として他者へ伝達できるようになる.
- 第一段階の目標は「理解」です.卒研開始後,約1~2ヶ月は,教員から出された課題に取り組みます.数回の打合せを行いながら課題をまとめていきます.この間は,提出のスケジュールなどについては明確に決まっていますので,目標に向かって努力することに注力可能です.ある程度,研究内容への理解が深まったところで,1年間の大まかな計画についてプレゼンを実施します.
- 第二段階の目標は「自律」です.自分の年間計画を意識しながら,中短期のスケジュールを考え,これを実行します.概ね2週に1回のペースで教員と打合せます.この打合せは卒研生が主導して行う打合せです.つまり,指示を受けるのではなく,自分の行動を自分で律することができるようにしていきます.勿論,研究の相手は物理現象ですから,上手くいかないことあります.計画・行動・報告・打合せ・計画修正のサイクルを自分で回せるようになっていきましょう.概ね,この段階で,卒研Iの仕上げ,つまり中間発表(8月初め)となります.
- 第三段階の目標は「解釈と表現」です.得られた結果に対して,3年までに学んだこととの対応を考え,類似点・相違点から結果を解釈します(考察).学部の実験レポートのような「既に分かっていること」を相手にしているわけではないので,考察にも時間がかかります.様々な面から仮説を検討し,その仮説を検証するための実験方法やデータの整理方法を考えて,実行する...の繰返しです.最後は,これまでやってきた内容の技術的表現として「卒業論文」の執筆と「卒研発表会」でのプレゼンとなります.
- 毎年多くの学生が,自分の知識の浅さや語彙の少なさ,やわかりやすい構成をつくれないことに苦労しながら頑張っています.できないことで四苦八苦するのは,できるようになるための入口です.心配はいりません.
- 指導教員として,卒研について以下のことを心掛けています.
- 「成果」ではなく「プロセス」で評価する.
- 「基礎」に戻ってやり直そうとする学生を支援する.
- 飛ばねばならない「明確なハードル」を用意する.
- 卒業研究は,諸君が社会に出ていくための最後の関門であると同時に,(もちろん,社会人になっても学びは続きますが,)学生として成長する最後のチャンスです.
- これまで,出来ないことに向き合わず,逃げたり誤魔化してきてしまったな...と思う学生は,これが最後と思って挽回しましょう.
- やり直そうとする学生を見捨てたりはしません.
- 固体力学研究室での卒研生活の基本(2019年度版)
- 土日祝日は休み.就活などによる欠席は届出制.
- 夏休みは8/8~8/31.冬休みは12/27-1/5.
- 毎週1回,研究室の定例ミーティングを実施.
- 打合せの頻度は,少なくとも2週に一度は必要.中盤以降は卒研生主導で進める.
- 予稿原稿やプレゼンは1ヶ月前から4段階程度で完成度を上げていく.
- 11月末には実験作業や解析作業の終了を予定.その後は卒論作成と発表準備とする.
- 卒研発表時には卒論本文も完成させる.ただし質疑を受けた内容は修正すること.
- スケジュールどおり進めば,卒研発表の1週間後で全て終了.
- 2月の中旬には卒研を畳み.後輩へ引き継ぐ.
- 固体力学に関するテーマで「こうゆうテーマに取り組んでみたい」という学生は,瀧澤まで相談に来て下さい.希望するテーマで学びが深まるような構成にできるか検討しましょう.
- 学生の好きなテーマなら何でもいいよ.というわけではありません.大学の卒研ですから,小学生の夏休みの宿題のようなものでは困ります.
研究成果が得られれば,諸君と一緒に喜べるのは確かですが,まだ分からないことをテーマに据えるのですから,実験がすぐに成功するとは限りません.卒研の合否は成果ではなく,その課題に対してどのような取り組みを進めてきたかで決まります.実験事実と真剣に向き合っていれば,言い訳を考える必要はありません.
わかっていることと,わかっていないことを区別すること.そうすれば,どこからやり直せばよいかわかります.例えそれが,恥ずかしいぐらい低いレベルであったとしても,社会に出る前の最後のチャンスと思ってやり直しましょう.
卒研テーマは,それぞれの学生が最も成長できるように用意した「ハードル」です.自分で飛ぼうとする行動力を評価します.指示を待つのではなく,自分で動き始めることが大事です.
多くの学生はこちらも気になると思いますので,記載しておきます.
大学院での研究
- 大学院では,教員と共同して研究課題に挑みます.教員は院生を指導する立場であると同時に共同研究者です.
- 大学院の修了要件には「学会で必ず1度以上研究発表をすること」が決められています.学会での発表は,学内の卒研発表とは全く意味が異なります.学会とは,同じ専門分野に関心を持った研究者や技術者が集って,同じ時間を共有する場です.全国または全世界の英知を集めて,時間の無駄になるような発表をするわけにはいきません.
- 準備万端,整えて,学会発表を行います.
- 本研究室では主に以下の学会での発表を行っています.
- 日本塑性加工学会
- 日本計算工学会
- 日本機械学会
- 日本鉄鋼協会
- 軽金属学会
- 研究成果をまとめるタイミングが合えば,国際会議などでも発表する.
- 詳しくは「研究業績」のページを見てください.
- 大学院卒として社会にでていくことになるので,基礎理論,実験,解析(CAE)をバランスよく身に付けられることが望ましい.特に「基礎理論」は何度でも見直すこと,全ての考察の起源でもあります.
- 学外の講演会やセミナーなどには積極的参加してもらいます.学内で小さくまとまってしまって,そこでの自己評価で満足しないこと.
- 諸君が卒業して出ていく世界は,諸君が考えているよりも深くて広い.
- そして,「分かる」ことは「楽しい」ことです.